准胝院のブログ

八王子市で准胝仏母を本尊とする天台寺門宗祈願寺院「准胝院」のブログです。准胝仏母祈願、不動明王祈願、人型加持(当病平癒)、先祖供養(光明供)、願いを叶える祈願(多羅菩薩)、荼枳尼天尊(稲荷)の増益祈願等

平清盛と荼枳尼天

源平盛衰記』全釈(三―巻一―3)

著者早川 厚一, 曽我 良成, 橋本 正俊, 志立 正知

という論文を見つけて読んでみたら、なかなか面白かったのでちょっと紹介します。

 『源平盛衰記』といえば平清盛などが荼枳尼天の修法を行っていたといわれ、『源平盛衰記』には清盛が狩りの途中で荼枳尼天(貴狐天皇)と出会い、この修法を行うか迷う場面が記されている[21]。ただし、『源平盛衰記』はあくまでも後世に書かれた文学作品であり、清盛が実際に荼枳尼天の修法を行っていたとする根拠はない(ウィキペディア)』とある通り、荼枳尼天信者はよく知るエピソードだと思います。

 私も「平清盛荼枳尼天」のエピソードの断片は知っていましたが、原文を読んだことはなかったのでいい機会でした。

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清盛と荼枳尼天歌川国芳
盛衰記人品箋 1840年

 

 まずは該当箇所の原文から行きましょう。

 『同人行陀天清盛、後のち憑たのもシク思ひテ弥いよいよ致二精せい誠ぜい一を、祈念シケレ共、余りノ貧ひん者じや也ケレバ、倩つらつら案ジテ思ひケルハ、「我諸国庄園ノ主ぬし也。縦ヒ何なにトナケレ共、生しやう得とくノ報トテ、身一ツ助くル分ぶんハ有るゾカシ。況んや、清盛ガ身ニ於テヲヤ。希き代たいノ果報哉」ト怪しむ処ニ、7或時、蓮れん台だい野のニシテ、大きナル狐ヲ追ひ出だシ、弓ゆん手でニ相ひ付けテ既ニ射ントシケルニ、狐、忽ニ黄女ニ変ジテ、莞爾と笑ヒ、立ち向テ、「ヤヽ、我が命ヲ助け給ハヾ、汝ガ所望ヲ叶ヘン」ト云ひケレバ、清盛、「三五矢ヲハヅシ、「イカナル人ニテオハスゾ」ト問フ。女、答へて云はく、「我ハ七十四道中ノ王ニテ有るゾ」ト聞こユ。「偖さてハ貴き狐こ天王ニテ御座ニヤ」トテ、馬ヨリ下りテ敬屈スレバ、女、又本ノ狐ト成りテ、コウく鳴きテ失せヌ。』

引用「源平盛衰記

 漢文、古文が苦手な私でもうっすら意味がとれました。

 冒頭でタイトル紹介した「論文」に、この原文に対する注釈が詳しく書かれていたので、少しピックアップして紹介します(※印部分は私見です)。

源平盛衰記では「荼枳尼天」が「貴狐天王」という名で語らる霊験譚がある。
・清盛の貪欲な富裕への希求が、荼枳尼天信仰へと導くことになる。
・場面は京都北部の紫野の船岡山付近で古来より墓地・火葬場として知られる場所。

※「墓地・火葬場」がヒンドゥーの鬼神だったダーキニーが生息するのが墓地だったといことを「知ってて」そうしたのか?少なくともそういった当時から荼枳尼天に、こういった「負のイメージ」があったことは確かんでしょうか。さらに、この論文では一四世紀中ごろ成立の『稲荷大明神流記』には、船岡山付近に住む老狐の夫婦が、稲荷の眷属となる逸話があることを指摘しています。
・登場する「黄女」が荼枳尼天だと思われますが、「光をはなつほどなる女」としたり、狐=黄色が五行説において土徳と位置づけられるなど(吉野裕子)諸説あるようです。
・狐は、『今昔物語集』『木幡狐』『玉藻の前』など、物語でしばしば女性の姿となって現れ、さらに狐を使いとし、ダキニ天とも習合した稲荷神も、女性の姿となって現れるとある。 

・文中にある『貴狐天王』は騎狐天王、黄狐天王との漢字をあてることもあるとする。※『騎狐天王』が最も分かりやすいですね。

・美濃部が紹介する『弁才天利益和談抄』には、「山城国稲荷大明神ハ・枳尼天にて黄狐天皇とし給ふ。弁才天女の垂迹にて一切に福をあたへ、国家をまもり給ふ事あらたなり」を紹介する。

弁才天の容姿の影響を受けていることがここで伺えますね。
 

 さて、ここからが「焔摩天信者」でもあり「荼枳尼天」でもある私が最も興味深いと感じた記事(実はこの話、知っていましたが)。やっぱり「荼枳尼天」は「焔摩天」とのつながりは濃厚!!
・『名波弘彰は、ダキニ天法が焔摩天供の別供から独立したもので、これにともなってダキニ天も独立した信仰対象となったと指摘する。これを受けて中村禎里は、時代による焔摩天曼荼羅の変遷を分析し、「一二世紀には女形を取りはじめ、狐との習合も明らかにしつつあった」と結論した。』

 以下は有名な『大日経疏』の話
・『ダキニ天について説明する『大日経疏』によると、彼らは人が死ぬ六ヶ月前にそのことを知り、その心臓を食らい、人黄を食らうことによって、一日に四域を巡り、すべてを意のままに獲得できるという』

 また、以下の有名な論説ですが一応引用
・『中村禎里はダキニが騎狐女神像として形象化される経緯について、閻魔の眷属としてのダキニから、野干(ジャッカル)=狐という誤解、両者にみられる葬地出没行動と死体嗜食という共通性、さらには図像の世界におけるダキニと弁才天との習合などを考察する(他に、笹間良彦参照)』

 さて、今回はじめて「源平盛衰記」をざっと流し読みしてみて思ったのが、この荼枳尼天のエピソードに限らず仏教に関する霊験譚が多く登場する印象です(大威徳明王の調伏の話とかもありました)。一度、現代語訳版を購入して全部読んでみるのも面白いかもしれませんね。

 参考文献:『源平盛衰記』全釈(三―巻一―3)著者早川 厚一, 曽我 良成, 橋本 正俊, 志立 正知

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民族闘争がテーマの漫画!?

 今日は仏教とは全く関係のない「漫画(アニメ)」の話です。

千と千尋の神隠し』が『タイタニック』の記録を抜いた2001年11月以来、19年ぶりに歴代興収1位の作品タイトルが入れ替わる快挙となった『鬼滅の刃』。

www.toonippo.co.jp

 しかしなんと!

 自他共に「漫画・アニメ好き」な私がこの『鬼滅の刃』は見ていません。

 いや、厳密に言うとTVアニメ版の数話だけ見ましたが、途中で見るのを挫折しました。

 作品には「好み」があるから仕方のないことだと思います。

 ということで今回は『鬼滅の刃』の話をするわけではありません。

 『鬼滅の刃』と同じく少年漫画原作でここのところ話題になっているのが『進撃の巨人』ではないでしょうか?

 アニメでは「ファイナルシーズン」が1月よりスタートして日本のみならず、海外でもメチャクチャ見られているとのニュースをよく目にします(進撃の巨人は海外でも非常に人気がある)。

shingeki.tv
 また11年続いた漫画の原作も大詰めで「4月で完結」が正式に発表されました。

 

 ファンからすると『ついに、ついに』という感じですね。

 この感じだと原作終了とアニメ終了を同じタイミングに持っていくという演出がされそうです(最近このパターン結構ありますから)。

 さて『鬼滅の刃』は私の好みには合いませんでいたが、『進撃の巨人』はかなり、かなり、かなり(三回言いました)好きです。アニメも好きですが、どちらかというと私は漫画の「原作派」です。

 『進撃の巨人』は、いまいち「絵」が最近のアニメのように決して「綺麗」ではなく、気持ち悪い巨人がガヤガヤと登場したりと、一般人には入りにくい作品だと思います。

 おそらく第一印象は「人間が巨人を倒す物語」なんて単純幼稚なストーリーを想像されがちですが……まったく!!!そんな簡単な話ではないんですよね。

 むしろ深すぎて、複雑すぎて、何度も読み返さないと理解できないレベルの作品です。

 アニメもいきなりファイナルシーズンから見ても、絶対理解できません。もしこれから見ようという方はあきらめてファーストシーズンから見始めてください(笑)

 (アマゾンプライム会員なら見れます)

 さて、「進撃の巨人」の主要テーマは私が思うに「民族闘争」だと思われます。上述したように単なる「巨人vs人間」という単純な話ではなく、かなりシビアに「民族の違い」による「争い」が描かれており「何が正義か?」という重いテーマを「考える」ことを読者(視聴者)に強要してきます。

 視点が変われば正義が変わる。進撃の巨人はそのテーマに真正面から挑んだ作品です。

 恐らくこれから原作最終回に向けて、世間も「進撃の巨人」で盛り上がっていくだろうと思います。

 このタイミングで一気に「追いついて」その盛り上がりの仲間に入るのも如何でしょうか?

 

 

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「クリカラ」という風

 今日も「倶利伽羅龍王」の関連記事です。

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 仏教に取り込まれる前の「倶利伽羅龍王」の話。

 インドのバラモン教で新ウパニシャッドには既に「クリカ」「クリカラ」の名前が登場するとある。ここで興味深いなあと思ったのが「龍」の名前として「クリカ龍」が登場するが、「クリカラ」は「風」の名前として登場しているとある。

 つまり「クリカラ風」。このころには「クリカ龍」「クリカラ風」は明確に区別されていたようですね。それが密教経典の儀軌に入ると「クリカ」も「クリカラ」も龍の名前として登場するとあります。「龍」と「風」との関りは皆の知るところだと思います。

 淵源としてのバラモン教時代にも「龍」と「風」に関係性を見出していたというのが興味深いですね(「倶利伽羅龍王信仰の研究(斎藤彦松)」参照)。

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引用:「倶利伽羅龍王信仰の研究(斎藤彦松)」

 またこの資料には「龍」と言えば「降雨」の功徳を思い浮かべますが、最初に説かれたのは「病疾の除差」とあります。「病疾の除差」の功徳は多くの尊格が持つ功徳とはいえ個人的にはとても関心のある功徳なので倶利伽羅龍王にもその功徳があったことに少なからず「ご縁」を感じた次第です。

今日のところはここまで。

 

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「みいこさま」回復中

 我が家の「ご眷属さま」のお一人である白猫「みいこ」。前回の記事で猫風邪が重症化してしまったとの記事を上げておりましたが、お陰様でかなり回復してまいりました。ごはんも食べられるようになり一安心です。

①みいこさま専用の加湿器を買いました。猫風邪は「鼻づまり」がとても苦しそうです。必須アイテムだと思います!(加湿器の前がお気に入りにゃ💓)

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②鼻が詰まると下を向いて寝れずないので、るびい姉さん(ビーグル)が助けています。

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 ずっと上を向いて「うとうと」しているみいこさまを、遊び相手になってくれない檸檬はちょっかいだしています。(一緒に遊ぼうよ🐈)

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③ようやく鼻が通って横になって寝れるようになりました。

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檸檬はみいこさまが「いつもと違う」ことを察して、どうも落ち着きがありません。分かるんですね。不安そうな顔してるね。

 

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みいこが猫風邪

 世界一美しい(自分調べ)白猫みいこが猫風邪をひいてしまいました。

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 厳密には世界一美しい(くどい)三毛猫檸檬が最初に感染しましたがまったくの軽症で、2日ほどたまにくしゃみするだけだ勝手に回復しました。

 しかしその後、その風邪を檸檬に染されてしまったみいこが、かなり重症化してしまいました。

 あんなにも美しい(世界一)みいこ(上写真)が今は目ヤニと鼻水で凄いことになっています。

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 全然食事もとれなかったので病院で2回ほど点滴をしてもらいました。

 猫風邪は、実は人間の風邪とは違って「かなり重い病気」のようです。動物病院の先生からは「食事しないから」と放っておくと死にますよ、と言われた。

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 それからは嫌がるみいこに、無理にでも口から食事をさせて体力温存を最優先しています。動物病院の先生曰く「この病気は感染力が強いから、可哀そうだけど入院させることはできない」そうです。まあ動物病院で院内感染してしまったら話にならないですよね。新型コロナと同じだね。

ja.wikipedia.org

 いつも近くに寄ってくる人懐こいみいこが、無理やりの食事を繰り返すうちに警戒されて逃げるようになりました。これをきっかけにみいこが「人間嫌い」になりそうで、寂しい限りです。

 はやくよくなって!がんばれみいこ!

 

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静かに、したたかに、人を死に至らしめる新型コロナウィルス

 医療機器関連の企業に勤める者として、新型コロナに関する情報発信をしたいと思います。

 巷には新型コロナに関する情報が溢れかえって、どれを信じていいものやら?という方も多くあると思います。

 この記事は「もし感染してしまったら」の話になり、本来的には医療従事者向けの記事ですが「専門的で難しいと箇所」はさて置き、この記事の最大のメッセージである「症状が軽いからといって侮るな」という部分は是非とも多くの方が知っておくべき情報だと思います。

medical.nikkeibp.co.jp

以下の部分がとても重要かつ恐ろしい部分ですね。

かぜのように大したことがなさそうな時間が経過する。どんどん悪くなるというよりも横ばい。しかしその後にふっと突然、パルスオキシメーターの酸素飽和度の値が低下する。「患者に苦しいか?」と聞いても、「いや、そんなに苦しくない」と答える。意識もはっきりしているのだ。
「胸が痛い」とも言わない。それほど咳込むわけでもなく、喘鳴もなく静かだ。全員ではないもののそれほどハーハー、ドキドキもしていない。至って静かなのに酸素のモニターだけ下がる。パルスオキシメーターを見なければ重症化に気付かない。患者は静的だ。
ここで人工呼吸器を選択しない場合、静かにやがて呼吸が止まる。

これが私の経験してきたCOVID-19患者の最期だ

引用:日経メディカル「CCOVID-19の重症化 自覚症状より酸素飽和度を重視せよ」2021/01/05 岡 秀昭(埼玉医科大学総合医療センター)

  これを読むと、一家に一パルスオキシメータ―という日がくるかもしれないですね。

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(購入される方は、パルスオキシメータで検索すると色々な商品が出てくると思いますが、個人的にはまり安価過ぎるものは避けた方がいいと思います)

 

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不動明王は倶利伽羅剣を持つのか?

 最近は、倶利伽羅龍王への「アンテナ」を伸ばしているので、ネットでも「倶利伽羅龍王」に関する記事を読むようになった。

 

 その中で興味深い記事があったのでご紹介したいと思います。

 

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 内容は不動明王が持つ件は「利剣」であって、不動明王の化身である「倶利伽羅剣」を持ってしまうのは「不動明王」が「不動明王」を持つことになるので理屈的にはおかしい……という内容です。

 

smcb.jp

 私も儀軌を詳しく把握してる訳ではないので、成否の判断はできかねるのですが、それなりに説得力があるように思いましたが、どうでしょうかね。

 

 ただ、私は過去に本山である三井寺の葛城修験入峰の際、犬鳴山七宝瀧寺で柴燈護摩に参列させていただきましたが、そこにあるお不動様は倶利伽羅龍をもつお像でした。

 

 (紫龍さんという方の参考リンク↓)

 

 七宝瀧寺はご本尊が倶利伽羅龍王ということもあるので、このお寺独特の感得像なのかもしれませんね。

 

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