ちょっとバタバタしており、2日更新が開いてしまいましたね(^^;)
さて、今日は仏像の修理について突っ込んで書いてみようと思います。あまり皆様がなじみのないお話だと思いますが、是非お付き合いください!
お寺や、密教や修験道を修行する行者でもなければ仏像を手に入れるということはあまりないかもしれません。しかし行者を目指す方などは「信者」の段階で仏像をお祀りしている方も多く知っています。また信心深い人は「お札をお受けする」だけではなく、自分が篤く信仰する仏さまのお像を手に入れたいと思われる方も多くいるようです。
さて、ご存知の方はご存知の通り、実はオークションで仏像を検索するとおびただし数の仏像が出展されています。つまりそれだけ需要があるのだと思います。
オークションで仏像を購入する方は私のように「信仰のために」という方と、それとは別に「美術品として購入する」という方もあると思います。
出品された仏像の中には「廃寺引き取り品」と書かれた、明らかに以前お寺でお祀りされていたであろう古いお像を目にします。個人的な想いとしてはこのようなお像が美術品として信仰とは離れたところでコレクションされるのは少々寂しく思います。
さて、私はオークションで出品されている仏像を購入した経験が何度かあります。
ただし……古いお像で、しかも正しい(儀軌に沿っている)お姿をしていて、なおかつ破損のないものはかなりの高値がついてしまうため、私のような個人ではそう簡単に手に入れることはできません。ご参考までに金額の相場(あくまで私の感覚)を書いてみると、優れた作品の多い江戸時代作ですと30~40cm程度の大きさで欠損がないお像は、仏さまの種類にもよりますが、安くて20万円。通常は50万円~70万程度だと思います。お寺の本尊としてお迎えするにはこれくらいの出費は掛けてしかるべきだと思いますが、個人でお迎えするにはなかなか手が出にくい金額です。
ただこれが「一部欠損している」というお像となると、中には金額が1/10程度になることがあります。だから私は過去にこのように欠損しているお像を安価に入手して修繕してお祀りするようにしていました。
ただ、仏像を修理する際には注意が必要です。
私が現在、とてもお世話になっている(拝ませていただいている)不動明王像はオークションで欠損しているお像を修繕したものです。
江戸時代前期の非常に作りのいいお像でしたが、破損が激しかったので2万5千円で落札しました。
(修繕前↓)
さてこのままではいけませんので、修理が必要です。
また、一生拝む大切なお像なので、下手に修理してもらって失敗するわけにはいきません。ですから私は実に10社くらいから修理お見積もりをもらいました。
そしてその出てきた金額を見て、あまりの金額の差に驚きます。
なんと下は10万円から上は80万円です。
2万5千円で買ったのに、修理費は最低でも10万円はかかります。これは全く想定内です。ただ最高額の80万円というのには流石に驚きました。しかしこれはただのぼったくりではなくて納得の理由があります。
実は仏像の修理と言っても、目的によって大きくやり方が異なるようです。
簡単にいうと、「新品に戻す修理」と「必要最低限の修理」の違いです。さてどちらのが金額がかかると思いますか?
これはおそらく皆さんの予想に反して?最低限の修理をする方が圧倒的に高くなります。どうやら「現状維持のまま修理する」ということがとても難しいようです。古いお像は、金箔も剥げて、長い年月かけて色が褪せ、いい感じに「ワビサビ」を感じる色合いになっていて、むしろそれが新品のお像よりも「ありがたみがある」と感じたことはありませんか?
この微妙な色合いを残したまま、しかも作られた当時の技法を最大限残しつつ(今の製法と全く違うそうで、現代の仏師の方でも再現するのは難しいそうです)、修理するのは我々素人が想像する以上に難しい様です。だから高いんです。
特に「文化財的価値」を考えると、このやり方しかありえないそうで、むしろ修理で手を加えれば加える程(つまり元の状態から離れる)に文化財としての価値は下がるようです。
だから微妙な色合いは全部落として新品同様に塗り替えて、昔の製法なんて気にせず外面だけ整うことを優先する「新品への修復」の方が工数としては断然少ないから安価で済むということなんでしょう。
この不動明王のお像で80万のお見積もりをくれた方は、実は多くの文化財の修繕を手掛けている有名な方です。この方からは「このお像は文化財的に価値があるものなので、欠損部分も手はなるべく加えない方がいいですよ」と丁寧なアドバイスをくれました。私が想像した以上にとても文化財的に価値のあるお像だったようです。「礼拝対象」としてではなく「美術品」とするなら、きっとこの方に頼むのが大正解だったと思います。
しかし私は礼拝対象として形をもとに戻す必要があったので欠損部分をそのままという訳にはいきません。だから別の方といろいろとやり取りをさせていただき「色はなるべく現状維持」で「欠損部分は全て直す」という条件で、15万円で修理していただきました(火焔光背までつけていただきかなり破格だったと思います)。
(修理完了当時のお像)
さて、そんなお不動様のお像。
一人前の密教行者になるまではずっとお不動様のお世話になりますから本尊の准胝尊と同じように一番、拝ませていただいているお方です。
小さいですけど、江戸前期のとっても丁寧に作られたらしいこのお像。
そんな素晴らしいお像なので将来的にはもっと立派なお厨子に入れてご眷属の制多迦童子と矜羯羅童一緒にお祀りしたいと考えています(^^)
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