准胝院のブログ

八王子市で准胝仏母を本尊とする天台寺門宗祈願寺院「准胝院」のブログです。准胝仏母祈願、不動明王祈願、人型加持(当病平癒)、先祖供養(光明供)、願いを叶える祈願(多羅菩薩)、荼枳尼天尊(稲荷)の増益祈願等

差別と適正

 師僧からは密教は差別の世界だと、よく指導されます。

一見すると「厳しい」印象を受けるこの言葉。

私はこの言葉は決して「能力のないものは去れ!」と無慈悲なことを突き付ける言葉とは思わない。ただ「適正ではないよ」ということだと思っている。

 

 私は一般企業でのサラリーマンを30年近く経験したが、この「適正」の重要性を痛い程経験している。

 昔はとてもポジティブな言葉として、また時に美しい体験談としての「やればできる」という言葉がある。

 しかしこの言葉には、実は落とし穴がある。それはその人は「やればできる人だからできた」ということ。

 これはやもすると「才能ない奴は無理」という無慈悲な言葉に聞こえるが、そうではない。

 私がサラリーマン経験を通じて「つくづく」感じる真理は「才能ないことは努力しても花が咲く可能性が極めて難しい」ということ。「それを言ったら元も子もないだだろう!」だろうか?

 慎重に話をすると、これは全く努力の必要がないと言っている訳ではもちろんない。努力したうえで「ダメなものはダメ」というジャッジが際めて重要だという事。

 具体的には私は営業経験が長いので「営業」という場面で話をすると……

 それこそ何人もの営業員を見てきたし、私の部下であれば若者の指導も沢山してきた。

 その中にあってどうしても営業に向かない人が一定数いる。

 努力して伸びる人と、伸びない人が明らかにいる。残酷なようだが、これはリアルな話だと私は思っている。でもこれは「残酷な話」でもなんでもない。むしろ悩める社員が「それを知る」ことが、救われる突破口になると思っている。

 

 一昔前、日本企業の職場環境は、今の基準からすれば「ブラック」と語られる企業がほとんどであったと想像する。だから実績の出せない営業マンは「努力が足りない」と叱責され、最後には「出来ない社員」のレッテルをはられ、下手をすればそのレッテルを定年まで引きずることもある。

 

 「営業ができない=ダメ社員」では決してない。「営業ができない=営業が向かない=適性がないだけ」という事実を知る事が大事なのだ。

 その社員が他の部門に行けば活躍できる可能性はいくらでもあるし、実際に業種異動をして大成功した人も何人も見ている。

 ただ、現実的には(少なくともうちの会社では)、「適材適所」でその社員が一番パフォーマンスを発揮できる職種を積極的に探すことはしていない。

 結果、向かない仕事を永遠に続け、いくら努力しても結果を出せずに、上司からも叱責されメンタルまで病んでしまう所員を大勢みてきた。

 心無い、無知な上司の中には、そんなメンタルを病んでしまった所員を影で「あいつは打たれ弱い」なんてことを平気で言う、旧世代の人間もいる。人間は打たれれば傷つくのは足り前だ。そんな傷ついた環境で最高のパフォーマンスを発揮できる訳がない。そんな社員が増えれば、長い目で見れば会社そのものの生産性が落ちるのは火を見るより明らかだ。

 私は少なくとも営業でどうしても結果を出せない社員には遠慮なくこう言うようにしている。「早く別の部署に転属することに全力を注げ」と。

たまたま配属された場所で、その仕事に適性がないと、人間的に「劣っている」と判断してしまうことが多い。他人も、そして自分も。

 でもそれは事実ではない。ただ「向いていない」だけ。それだけのことだ。もっと聞こえのいい言葉を使うなら「それが個性」なのだ。個性が違うだけで、優劣の問題ではない。だからその人の価値を下げるものでももちろんない。今の仕事がきつくて、楽しくなくて、やりたくなくて……心を病むくらいなら今の仕事で努力すべきではない。その努力の方向を「自分の向いている仕事を探す」ことに注ぐべきだ。

冒頭に戻ります。

 密教は差別の世界だという。その真意は「適性を判断する」ことで適材適所を促し、皆が自分に合った仏道を進むことができるという極めて合理的な世界だと私は感じている。

 もし、今まさに「適性のない仕事」で苦しんでいる人がいたら、さっさと違う仕事をするという選択肢を持つことをお勧めします。

 

 先天的に耳の聞こえない保護猫の「みいこ」です。耳が聞こえないみいこに「呼びかけに返事しろ!」なんて訓練しても無理なものは無理です。そして耳が聞こえなくても「劣っている」なんて誰も思いませんでしょ?彼女は耳が聞こえない分、よくアイコンタクトをしてくれるし、うるさい部屋でも平気で寝てるし、いいことずくめ。これも「個性」です。

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