頭に動物を頂く尊像は数多くあります。
さて、先日より制作している尊星王菩薩。
この尊星王菩薩、つまり妙見菩薩はその容姿のバリエーションが非常に多く存在するのは以前の記事でもふれたが、この妙見菩薩が「頭に頂く」場合には、私が確認した範囲では多頭(七頭)の蛇か鹿のどちらか。
私が作成しているお像には「鹿」は乗せようとは思っていたが、「多頭の蛇」というのはブログの読者さまなら分かっていただけると思うが?個人的な信仰で「多頭の蛇(龍)」は縁が有りすぎるので「多頭の蛇」も捨てがたいと……。
さて、私が参考にしている仏画ではとても可愛らしい「バンビ」のように「鹿」が描かれているが……
この尊星王菩薩が頂いてる「鹿」は厳密には「ジャコウジカ」とされる。
以下、師僧の著書からの引用
『鹿は尊星王供に鏡と共に供えられる麝香(じゃこう)を表わす。つまりこの鹿はジャコウジカである。麝香も鏡も古代の高貴な女性が用いる品であるが、三井寺では、尊星王は実は吉祥天と同体ということになっているのである』天部信仰読本 羽田守快著(青山社)
ここで、古い時代にデザインされた仏像「あるある」の話。
あくまで「想像」の話になってしまいますが、古い仏像、仏画に関して、その動物を仏師が実際に見たことがないのでは?という話。
おそらく当時の文献などを参考にデザインされたのだと思うが、現代の我々からすると「おかしいぞ?」というのが結構見受けられる。
例えば私が以前に修繕した馬頭観音の「馬」は、どうてみて「馬」に見えなくて修繕すべきか大いに悩んだ経験がある。
参考記事
「馬」ですからこういったことが起こるなら、いわんや「ジャコウジカ」をや、ですよね。当然「馬」以上に……例えば平安時代、日本で「ジャコウジカ」の実物を見る機会はまずなかったろうと想像できます。
私も最初は「普通の鹿もジャコウジカも、見た目たいして変わらないだろう?」と高を括っていましたが、念のため「ジャコウジカ」を調べてみました。
すると……
「おやおや?」となってきました。
…確かに「顔」に関しては鹿もジャコウジカもそう大差ないのだが……決定的な「違い」があることを見つけてしまったのだ。
それは……
「ジャコウジカは角を持たない」
ということ。
なんと、なんと。
むろん、これを当時は知る由もないだろうな、と思った。
だから日本在来の雄鹿では当たり前の「角」が仏画にはしっかり描かれてしまっている。
さて、実際の作成ではどうしてものか?
「知ってしまったものは後には引けない……より正確に角はなしにするか?」
「いやいや、昔の絵がそうなってるなら、それに準じたほうがいいのでは?」
非常に悩ましい。
問題は行者である私が「角が有ったらそれはジャコウジカではない」と知ってしまったから、角がある鹿を見てもジャコウジカに見えないということ。
だとすれば「自分が拝むお像」ならば、正確に「角なし」で作成するがよいと結論づけた。
さらに付け加えるならば、より「正確に」という意味でジャコウジカの特徴である「雄は上の犬歯が大きく発達して、サーベル状の牙となる」も反映させようと思う。
「麝香」を発する麝香腺は成獣の雄にしかみられないらしいので、だとすれば「雄」の容姿にするのがより正確だと思うからだ。
ということで、私が作る「ジャコウジカ」は概ねこんなイメージの「鹿」になると思います。
お前そういう動物じゃないだろ感はジャコウジカ、マエガミジカ、ウォーター・ディアもレベル高い pic.twitter.com/KKb7zttlBN
— さめ (@SAMEX_1u2y) 2015年5月22日
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