まずリンクの仏像を見てください。
すべて国宝なのでご覧になったことがある方が多いと思います。
なぜこの仏像を紹介したかというと、これら有名な仏像が全て「粘土製(塑像)」だからです。
「いやいや、その話は前の記事で読んだよ?またその話?」」
という方もいるのでしょうか。
でもですね~多いんですよ、質問が。
「粘土でいいんですか?」
ってね(笑)
多いというか、私が作った仏像の話をするとまず必ずといっていいほどこの話をされます。
歴史的な話をすると、本来のインドでは金銅仏が最初。あと石仏。共に中国(朝鮮半島)を経て日本へ伝来します。飛鳥大仏や法隆寺の金銅仏をイメージしてもらえばOKです。
その後、金銅仏では費用も手間もかかるので金銅仏の制作途中で使う「粘土の像」がコストカットのために流行ったのが奈良時代。
当時の大寺院の特徴として、本尊は金銅仏(もしくは脱活乾漆造)で作るが、周りを囲む象はコストカットのために塑像というパターン。
上述リンクの東大寺の日光・月光菩薩、執金剛神、新薬師寺の十二神将がまさにそうですね。
ただその後の日本においては「木材」というローコストの素材の出現と、優れた仏師の登場で塑像は淘汰された、ということなんでしょう。
また特に日本に木造の仏像が多い理由に山岳信仰との習合で「ご神木信仰」から「木製は尊いと考えた」という説を聞いたことがあります。たしかに「神聖な木」から彫刻したお像である意義は大いにあるように感じます。
それでも本来的には「金銅仏→塑像→木造」という歴史があり時代、時代の背景ありきでの「材質」なので、「材質だけ」を取り上げて「良い、悪い」と結論づける性質ものではないのかな、と感じます。
一般的な答えとしては、すくなくとも日本でも奈良時代を中心に多くの優れた塑像の仏像があるのでその事実一つとっても「粘土でいいの?」の答えは「もちろん大丈夫」になりますね。
※密教の儀軌では、時に「木材」の材質、サイズまで指定がある場合もあるので「全てのケースで」という意味ではありません。
実際に、現代でも私と同じ石粉粘土で仏像作成している仏師の方はいます。
また「粘土で大丈夫?」という疑問をもたれる方の中には、制作途中の画像を見ると、一見「紙粘土のように見える」からかな?とういう気もします。ハッキリ言っておきますが石粉粘土と紙粘土は、質感、強度、剛性など、全然違います。同じなのは「白色」ということぐらいでしょうか(笑)
石粉粘土は、比較するなら、むしろ「木材」に近いと考えてもらっていいと思います。
具体的には木材と石粉粘土を強度的に比較すると、ネット情報ではなかなか出てきませんでしたが「硬度」は石粉粘土が優れるが、「弾性」は木材の方が優れるとありました。
個人的な(経験的な)感想としては、彩色してしまえば「見て、触って」も木材と区別できる人は少ないように思います。
★ご相談はこちらから★
記事が面白かったら
クリック↓お願いします!