暑くて寝苦しいということもあったのだろうか、昨晩、不思議な夢を見た。
夢なんてものは、その多くは起きた直後から記憶の輪郭が崩れ始め、数分もすればそのストーリーは曖昧模糊に漂い、最後は場面場面の朧げな風景だけが映像としてかすかに残る……そんなものだ。
だからこれから書くこともそんな曖昧模糊となってしまった儚げな記憶の断片を無理やり想像(妄想)で補完しながらつなぎ合わせたものなので、実際に見た夢というよりは自分の都合で面白おかしくストーリーをでっちあげている可能性も大いにある。
その前提で「話半分」で楽しんでもらえれればと思います。
どうやら私は小学生の低学年くらいの年頃のようだった。小高い山の上にある神社の参道。その途中からうっかり見過ごしてしまうほどの細い道が伸びる。それでも私は迷わずそのわき道へ進路を変えた。
その脇道は参道に比べると傾斜がきつく少し崩れかかった石段が作られていた。まだ若い私はその古い石段を駆け上がる。
山頂に近づくと小さくて、壊れかけた古い鳥居が見えてきた。私は一礼してその鳥居をくぐると、次の瞬間に「えっ?」と驚く。
その日は神社のお祭で境内には多くの屋台が出店されていた。
ただ「ここ」に屋台が出ているとは予想していなかった。
そこは参道から外れて、今まさに通ってきた急な斜面を登ってようやくたどり着く場所にある。
ほとんど参拝者も立ち寄らない。
そしていつ合祀されたかも分からない小さな小さなお稲荷様の祠がある。
ここで屋台を出したって、誰も通らないのだから意味がないのでは?
そう、子どもの私でも直ぐに想像ができた。
その屋台の暖簾には、「蜜柑飴」と書かれていた。そして屋台の中には一人の女性がその「蜜柑飴?」をせっせと作っている。
「おい!小僧!」
いきなりその女性は私を呼びつけた。
その声は怒気を含んでいる。
「え?な、なんでしょう?」
私は訳も分からずそう答えた。
「おまえ!どうしてくれるんだよ!」
「は?何が……ですか?」
「何がじゃないだろ?これじゃ参拝者こないだろ!」
八つ当たりなのか?そんな理不尽な答えが返ってきた。
彼女の凄い剣幕を見るに相当イライラしているのは分かった。確かにここには参拝者はほとんどこない。だから、ここに屋台を出している「あなた」が間違っているのだ。ただそれを私のせいにされても……
「あの、ここじゃなくて境内に出店した方が……」
「はぁ?!私みたいな若いねーちゃんが境内に場所取れる訳ないだろ!」
「でもそれは僕には関係ない話のような……」
勢いに押されてはいがた、そう反論してみた。
「関係ないだと!?ここのお稲荷さん任されてんのお前じゃないの?!」
どうやら私は神社の下っ端で、この小さなお稲荷さんを任されているらしい(夢での設定なので曖昧なのだが)。
「参道からの案内版はない、途中の階段はろくに掃除もされていない、草はぼうぼう、お前毎日何やってんの?こんなんじゃ参拝者もこなくなるは!ちょっとは責任感じろ!」
そうまくしたてられてぐうの音も出なかった。
確かに私は、毎日の最低限の給仕を「やらされ」でやっていただけだ。
「せめて参道の脇道のところにたって、呼び込みでもしてこい!!」
そう捨て台詞をはかれ、私はいてもたってもいられず、来た道を一目さんに戻った。
それから私は大慌てで、即席の「お稲荷様→」という標識をありあわせのポスターで作り、神社のSNSにも「是非!お稲荷様にもご参拝ください!」と書き込んだ。
そして先の「おっかないおねーさん」に言われたように、参道のお稲荷さんに続く脇道の入り口で案内(呼び込み)を続けた。
その後、決して多くの人ではないが、何人かの参拝者がお稲荷さんに向かうのを見て少しだけホッとした。そして一つしか屋台がないなら皆、あそこで蜜柑飴を買うのでは?とも期待した。
……
日も沈んで、薄暗くなったころ、参拝者もほぼいなくなった。
私はまた急な階段を登り、お稲荷さんのお宮を目指した。
小さな鳥居について見ると……
そこには既に屋台はなかった。
「あれ?もう撤収したのかな?」
私は少し残念に思った。きっとあのおっかないおね―さんに「小僧!やればできるじゃないか」とでも褒めてほしかったのかもしれない。
「また会いたいな」
そんな気持ちも芽生えていた。
それ以来、そのお稲荷さんへ続く路、階段はよく掃除をし、草を刈り、即席だった案内板も直し、平日も少しづつ参拝者の数も増えていった。
ただ、毎年、また「あのおっかないおねーさん」の屋台が出店されるのでは?と期待したのだがその時は二度とこなかった。
場面変わって。
古くて小さかったお稲荷さんのお宮が新しく改築されたようだった。
その開眼式を私がやっている(小学生のシーンでは神社の下っ端だったが、この時は密教の行者になっていた)。
「ようやく、お宮も立派になったな」
下っ端から守り続けたお稲荷さんが立派になり、私は胸いっぱいになっていた。
その時異変が起こる。
急に、張り詰めたような緊張感が内蔵をえぐるように突き抜けた。
「あ、やばい」
直感的に思う。
次の瞬間にお宮の向かって左サイドにゆらゆらと漂う白い影が顕れた。
私は行者という立場にありながら恐怖で足が震えた。
その白い影を恐怖で直視できない。
私は首を垂れて目を瞑った。
「顔を上げろ」
その白い影が言ったように感じた。
しかし、私は「見たら終わりだ」という恐怖にただただ怯える。
「はやく顔を上げろ!」
怒気を含んだその声は女性のものだった。
私はその怒声に抗えず恐る恐る顔を上げる。
するとそこにはとてつもない威圧感のある白い影だけがゆらゆらと揺れていた。
その姿はボンヤリしていて何者なのかよく分からない。
「ひさしぶりだな」
場の張り詰めた緊張が少し和らぎ、そんな声が響いた。
一瞬だけ、その女性の顔の解像度が上がり、ゾッとするほど美しい女性の顔と眼があった。
「久しぶりだな」
それだけ言って、一瞬でその白い影は消えた。その刹那、獣の尻尾のような感触が顔をペタリと叩き、身体全体に凄い風圧を感じた。
ゆらゆらと漂っていた白い影の、美しくて、しかし怖過ぎる女性の顔。一瞬見えたその顔は確かに屋台にいた「おっかないおねーさん」のそれであった。
幽霊?
違う。そんな半端な威圧感ではなかった、と夢の中でも感じていた。
起きてから寝汗をかくほどに緊張していた(まあ、暑さもあったろうが)
眼が覚めてから「ふーっ」と一息ついた。
割と長い夢だったことと、いつもの夢よりはリアルであったこと。
実は残念ながら夢の中では分析的な頭は機能していなかった。
だからこの女性の正体に夢の中では全くたどり着いていませんでした。
ただ「ああ、あのおっかないおねーさんだ」ということは辛うじて分かっていたというレベル。
ただ、こうして文字にしてみると「お稲荷さん」「怖くて綺麗な女性」「獣の尻尾」とくれば、ここの読者なら荼枳尼天を連想しない人はいないでしょう。
「そう思いたい」願望込みでの解釈ですけどね(笑)
まあ、冒頭で書いた通り、そもそも「夢」の話だし、「妄想」による補完が随分入っているのでほどほどに私も「不思議」を噛みしめておこうと思います。
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