地道に密教修行

天台寺門宗の祈祷寺院にて密教の修行しております「亮和(りょうな)」と申します。修行、信仰を通じて感じたことなどを綴っていきます。※過去(本格的な修行前)に「地道に観音信仰」というブログを運営しておりました。どうぞ気楽にコメントいただけると嬉しいです!

准胝尊特集③准胝さまって仏母なの?観音なの?

准胝は「観音」なのか?「仏母」なのか?

 

モヤモヤしている人は多いと思います。

 

「信仰」ということを軸に考えれば、「観音」でも「仏母」でも、どちらもそれとして信仰されてきた揺るぎない「歴史(事実)」が存在する訳なのでどちらが正しいとか間違っているなんて議論するのは個人的にはナンセンスだと思います。

 

もちろんどちらも正しいが正解だと思います。

 

ただ話の軸を「信仰」ではなく「歴史」とすると、日本へ伝来する以前のインド、中国で「准胝」が観音であったことはないということになります。

 

前回の記事で書いた通りインドでは元々チュンダーという女神でしたし、仏教で准胝を説くお経に関しても一貫して女尊として説かれています(観音さまは本来男尊)。

 

つまり准胝が観音になったのは「日本」に入ってきてからです。

 

また日本に入ってきた当初准胝さまは「仏母」でした。それが分かるのが、空海が請来した両部曼荼羅のうち、胎蔵幅に描かれてる最初の准胝さまの「お姿」です。

 

密教行者にとっては常識のことと思いますが、この胎蔵曼荼羅に描かれる准胝さまは、観音さまがいるべき「蓮華院(観音院)」にはおらず七倶胝仏母の名前で「遍智院」に仏眼仏母と並んで配されています。

 

この辺は普通の信者の方にはちょっとハードル高いと思いますが、簡単にいうと観音さまのお部屋ではなく菩薩から昇格した仏さま(仏部)のお部屋にいるということです。

 

ではいつから准胝さまは「観音」になったか?ということですが、それが分かる記事を紹介します。

 

『わが国で准胝仏母が観音の名を付して呼ばれるようになるのは、それを説く『大乗荘厳宝王経』(北宋・天息災訳)が請来されて以後のことと考えられている。当時この経典をいち早く入手して活用したのは小野僧正仁海(951~1046)で、彼は、治安三年(1023)に建立された法成寺薬師堂の六観音造像に際し、天台系の六観音(止観六観音)、すなわち大慈、大悲、師子無畏、大光普照、天人丈夫、大梵深遠を真言六観音の変化とし、代わりにそれぞれ現行の正(聖)、千手、馬頭、十一面、准胝、如意輪を当てている。つまりそこでは、小野流の開基である聖宝(832~909)が醍醐寺に准胝堂を建立して以来、同流を中心に篤く信仰されてきた准胝仏母に、上記『宝王経』によって観音の名を付すとともに、あらたに仁海ならではの大胆な付会が認められる(日本の美術No.382不空羂索観音像・准胝観音像 浅井和春著 至文堂)より引用』

 

少し仏教(もしくは仏像)に詳しい人は、日本において准胝観音の総本山といえば「醍醐寺」ということに異論はないと思います。その理由がよく分かる記事でしたね。

 

また引用文に『大乗荘厳宝王経』というお経が出てきます。

 

日本では観音さまのお経と言えば法華経の普門品(観音経)ですが、チベット(おそらく中国でも)における観音の根本経典は『大乗荘厳宝王経』というくらい超有名なお経です(日本ではあまり読まれていませんが)。チベット仏教で有名な「オン・マニ・パドメー・フーム」という真言を説いているお経と言えば「ああ!」となる人が多いでしょうか。

 

上記引用ではこのお経を論拠に准胝は観音だと説いているとなっています。しかし、このお経を読んでみると分かるのですが、このお経に准胝が観音とはどこにも書いていません。確かに准胝さまの真言(大呪)が登場して明らかに観音と非常に関係の深い尊格ということはうかがい知ることができるのですが……

 

事実、過去からこの辺の議論があったようです。同じ真言宗では「広沢の一伝には此尊を観音部に非ずして仏部なりとし……」(密教大辞典)とありますし、天台宗では六観音のうち「准胝」は観音と認めず「准胝」の代わりに「不空羂索観音」を数えるのはご存知と思います。

 

ここからは私の想像ですが、日本で准胝尊を広めるため圧倒的な布教力のある「観音」として、なおかつ「六観音」として布教する戦略をとったという一面があるような気がします。

 

事実それによって日本ではほかの観音様ほどではないにしてもこれだけの信仰がさているのはまさに准胝さまが「観音である」ことの意味が大きかったのでは?と思います。

 

ということで結論は、本来准胝尊は「仏母」であったが日本では平安時代に「観音」として信仰されはじめ、その後、准胝=観音ということが一般的になった。しかし今でも本来の仏母とする派もある……ということですね。

 

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