今日は(今日も?)マニアックなお像の話をしたいと思います。
一応、今までの記事との関連性を持たせたお話しになります。
このお話は私の修行の話とはあまり関係のない、どちらかと言うと私の「趣味」に近い記事ですので気楽にお付き合いください。
意外に面白い発見があると思います!?
さて、先に紹介した八臂弁才天はヒンドゥーの女神「ドゥルガー」かも!?という記事を書きましたが、今回は妙音弁才天、つまり琵琶を持つお姿の弁才天とドゥルガーに関係のありそうな尊格の話です。
そのキーとなる尊格は「襄虞梨童女(じょうぐりどうじょ)」という天部尊です。
聞いたことないですよね?
youtubeに白画で紹介されていますので、まずご覧になってください。動画を見たらその動画の解説文に注目です。
その解説文にこう書いています(引用)。
『襄虞梨童女(じょうぐりどうにょ)は観自在菩薩の化身とされ、雪山の北香酔山に住み、百福の相好をもってその身を荘厳し、鹿の皮を衣とする。諸々の毒蛇を瓔珞とし、また諸々の毒虫などを常に従え、毒漿毒果を食らうとされている。 一切有情の毒を防ぎ滅し、また一切衆生の有する三毒の煩悩をも除滅する事を本願とするという。この名は、インドの神シヴァ神の妃ドゥルガーの異名としても用いられるようである。襄虞梨童女の二臂像を中心とする曼荼羅を本尊として行われる修法に「襄虞梨童女法」があり、これは諸毒を除くための修法である。』
襄虞梨童女がドゥルガーの異名ってなってますね。ドゥルガーの象徴的ともいえる三叉戟を持っているところは興味深いです。
錦織亮介氏の「天部の仏像事典」でもほぼ同様の説明が書いてあります(↓)。
典拠としては「観自在菩薩化身襄虞梨童女銷伏毒害陀羅尼経」「襄虞梨童女経」に説かれ、容姿については「十巻抄」「別尊雑記」「覚禅鈔」などの有名な図像集にも記載があるようです。
さて、襄虞梨童女がドゥルガーの異名という根拠は、私もよく分かっていないのですが、今日注目するのはドゥルガーとの関係ではなく襄虞梨童女と弁才天の関係です。
弁才天はもともとヒンドゥーの「サラスヴァティー」だということは、多くの方がご存知のことと思います。
実はそのサラスヴァティーが襄虞梨童女にとても関係が深いと仏教研究者の頼富本宏先生が下記の図書で書いてます(密教仏像図典 人文書院)。
襄虞梨童女の「じょうぐり」は「ジャーングリー」の音写です。ジャーングリーは准胝特集でもご紹介したインド密教の成就法儀軌である「サーダナマーラー」にその図像規定が細かく出ています。
詳細は省きますが、計7パターンの図像があるようです。そのうちなんと「琵琶を弾き」「白蛇を持つ」という特徴を持つ「ジャーングリー」の説明が乗っています。
具体的には「白いジャーングリー」というタイプで、ネット検索でその図像を見つけました。以下のリンクで確認でします。
頼富本宏先生の「密教仏像図典 人文書院」から記事を引用します
「(ジャーングリーが)琵琶を弾くとする規定から、サラスヴァティ―(弁才天)との関係を見ることも可能である。実際、ヴェーダ文献の中にサラスヴァティ―が蛇毒を解消させる記述があることが指摘され、サラスヴァティ―自身が、シャーングリーの起源であるともされる。インドではサラスヴァティ―と蛇が結びつく図像例は見られないが、日本では弁才天は蛇と関連付けられ、中世以降、蛇の姿で表現された作例さえ見られる。これについて、弁才天が日本古来の宇賀神という蛇形の尊格と習合したと指摘されているが、それ以外にジャーグリーの図像要素の混入があったことも十分考えられる。日本に来て弁才天は再び蛇の要素を取り戻したことになる」
確かに「琵琶」と「白蛇」というキーワードから弁才天との関連性は大いに可能性があるかも?と私も思ってしまいました。
先の記事で指摘した八臂弁才天とドゥルガーの関係ですが、今度は襄虞梨童女というあまり知られていない尊格を介してドゥルガーと弁才天が結びついていることに不思議な偶然を感じます……
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