割と多く聞かれる質問に「准胝佛母ってドゥルガーなんですか?」というのがある。
中にはそう決めてかかる人までいるので、こちらとしては困ってしまうこともある。
これについては、諸説あるようですが私の中では以下の記事で詳しく説明しているの でご参考にしてください。
簡潔にまとめると、私の見解は「ドゥルガー=准胝ではなくて、チュンダー女神(准胝仏母)の容姿が変化する過程で、ドゥルガーの図像学的特徴のみ影響を受けた」です。
過去記事
またこれとは別に「ドゥルガー」と関係の深い女神を二尊、このブログで紹介したことがあります。
それが皆が知る八臂弁才天と、殆ど知られていない「襄虞梨童女(じょうぐりどうじょ)」です。
この記事の考察は別々にしていますが、その過程で弁才天と、襄虞梨童女は「ドゥルガーが云々」は抜きにして「とても近しい」ということが分かりました。
ですから今日は、一旦「ドゥルガー」の話は置いておいて、弁才天の話に絞ります。
上の記事で考察した時の結論は弁才天と、襄虞梨童女はとても近しい存在であったのでは?ということ。
その根拠は、襄虞梨童女(じょうぐりどうじょ)、つまり「じょうぐり=ジャーングリーン」の姿が「琵琶」を持ち弁才天の元のお姿であるサラスバティ―と似ていること。さらには日本では弁才天と言えば「蛇」との関係性が強く信仰上でも強調されているがこのジャーングリーンは蛇を纏っていること。
サラスバティ―は通常、身体に蛇を纏っていないように思っていたのでこの記事を書いたときには、ジャーングリーンが弁才天なのでは?ぐらいに感じていた。
ジャーングリーンのお姿
https://www.himalayanart.org/items/59727
少なくとも故・頼富本宏先生はこの著書で「インドではサラスヴァティ―と蛇が結びつく図像例は見られない」と考察している。
「(ジャーングリーが)琵琶を弾くとする規定から、サラスヴァティ―(弁才天)との関係を見ることも可能である。実際、ヴェーダ文献の中にサラスヴァティ―が蛇毒を解消させる記述があることが指摘され、サラスヴァティ―自身が、シャーングリーの起源であるともされる。インドではサラスヴァティ―と蛇が結びつく図像例は見られないが、日本では弁才天は蛇と関連付けられ、中世以降、蛇の姿で表現された作例さえ見られる。これについて、弁才天が日本古来の宇賀神という蛇形の尊格と習合したと指摘されているが、それ以外にジャーグリーの図像要素の混入があったことも十分考えられる。日本に来て弁才天は再び蛇の要素を取り戻したことになる(頼富本宏先生の「密教仏像図典 人文書院」)」
しかし、つい先日のこと。
「ジャーングリーン」が弁才天?という私の適当な妄想を吹き飛ばす写真を発見。
twitterの「お勧め」にこんな画像が飛び込んできたのだ。
A polychromed wood stele of Sarasvati
— hindu aesthetic (@hinduaesthetic) 2023年3月27日
Nepal, circa 17th century pic.twitter.com/Hl3bJb8W5r
記事には「A polychromed wood stele of Sarasvati Nepal, circa 17th century(17世紀頃のネパールの彩色木製サラスバティ―像)」とありますが、このお像を見ると蛇を纏っているように見えます。不明瞭なので蛇ではない可能性もありますが……
つまりは結局何が言いたいのかというと、日本では八臂弁才天の頭に宇賀神さまがいる割に「なぜ弁才天と宇賀神が習合したのか?」ということについては諸説あって割とはっきりしない印象です。
ただ、少なくとも「突然意味もなく弁才天と宇賀神が習合した」訳ではなく、やっぱり当初から弁才天には「蛇」との関連を強く持った尊格であった事実。
だとすれば……
古(いにしえの)日本でも上で紹介した蛇を纏う弁才天の姿を(例えば留学先などで)見た僧侶がいたのかもしれないなあ、……などと想像を膨らませるのも悪くない。
なんて思ってみました(^^)
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