准胝院のブログ

八王子市で准胝仏母を本尊とする天台寺門宗祈願寺院「准胝院」のブログです。准胝仏母祈願、不動明王祈願、人型加持(当病平癒)、先祖供養(光明供)、願いを叶える祈願(多羅菩薩)、荼枳尼天尊(稲荷)の増益祈願等

文殊菩薩と青蓮華

 先に多羅菩薩(ターラー尊)の記事を書いた際に「青蓮華」に触れました。

ryona.hatenadiary.jp

 その記事に「文殊菩薩も青蓮華を持つ」というコメントを頂いたのでそれについて少し調べてみました。

 文殊菩薩と言えば「三人寄れば文殊の知恵」という諺で聞くように「知恵」の尊格として有名です。

 そういえば先日山形の「置賜三十三観音巡り」を萬行する過程で「日本三大文殊」の一つである「亀岡文殊」を参拝するご縁を頂きました。

奈良県桜井市安倍文殊院京都府宮津市の切戸の文殊とともに、日本三文殊の一つに数えられる「亀岡文殊

というように京都、奈良と並ぶ文殊が山形におわすのにはビックリしましたが、やはり智慧の尊格として「学問の神様」として祀られていました(神様ではなく菩薩様ですが……)

 さて、そんな知恵の仏、文殊菩薩ですが仏教徒ならその「知恵」が実は「智慧」のことであって一般的に用いる「頭が良い」という「知恵」ではなく「悟り至るための智慧」とニュアンスがかなり違う事と、その智慧を「パンニャ」といってその音写が「般若」ということもご存知だと思います。

 その「般若」が尊格化したのが「文殊菩薩」と言えばもちろん間違いではないのだが、もっと直接的に「般若仏母」という尊格も存在するので「その違い」ということになると話がマニアックな方向に行くのでそれは次回するとして、今回は「青蓮華」について少し記したいと思います。

 さて「文殊菩薩」の持物といえば「利剣」「般若経典」「青蓮華」の3つがあると思います。青蓮華の上に般若経や金剛杵が乗ることもありますが、一番目につくのは「利剣」「般若経典」のような気がします。

 「容像学」的に見ると「利剣」を持つ文殊菩薩が登場するのは「密教以降」のようで、それまでの文殊菩薩は「与願印」「青蓮華+経典」という姿が一般的であったようです。

 つまり文殊菩薩は「密教以前」「密教以後」で容姿が変化しているということです。

 そうなると最初期の姿から「青蓮華」を持っているとなると「文殊」と「青蓮華」の関係性はより深いと想像します。

 しかしながら、色々調べてもその「青蓮華→智慧」の「淵源」にたどり着くことがなかなかできない。

 文殊菩薩と青蓮華のことを調べて出くわす文献は「密教経典(つまり変化後の姿)」
である「大日経大日経疏含む)」です。

大日経疏「具縁品」曰く……

「畫文殊師利。身鬱金色。頂有五髻作童子形。左持泥盧鉢羅。是細井葉青蓮華。(中略)青蓮是不染著諸法三昧。以心無所住故。即見実相」

文中にある「泥盧鉢羅」が「ウトパラ=青蓮華」のことですから左に手に持つと確かに書いてあります。

 しかしこれだけだと「青蓮華」がなぜ「智慧」に繋がるのかよく分かりません。

 その他「青蓮華」で文章を拾うと以下のような文言があるようです。

青蓮は智の働きが煩悩を克服する精進の徳をもつことを意味する

青蓮華は不染着の義なり

青蓮華は最勝(自己に打ち克つ)の故也

青連は菩提心が開花する勢と精進の徳を示す

 ピシャリなのは「智の働きが煩悩を克服する精進の徳をもつ」でしょうか。

 このように「青蓮華」が「智慧」なのかは「お経にそう書いてある」と言われれば確かにそれも一つの答ですがいまいちピンときません。

 そこでここから先は「想像たくましく」話をしたいと思います。

 多羅菩薩が青蓮華を持つ理由は「青蓮華」が「仏の目」と関係していることを前の記事で書きました。

 なぜ「目」が「青」なのでしょうか?

 そこで「目」と「青蓮華」をキーワードに調べると以下の文にたどり着きました。

「阿難は迦毘羅城の釈迦族の出で、釈尊の従弟でありました。生まれながらにして容姿端正、面は浄満月のごとく、眼は青蓮華のごとく、その身は光浄にして明鏡のごとくなり」

 阿難と言えば十大弟子中、多聞第一といわれました。当時のインドでは一般に学問は書物ではなく、師から弟子への口伝ですから、「聞く力がある=博学多識」ということを意味します。だから阿難は弟子画「青蓮華の如く」とあるのは、いろいろ想像を掻き立てます。

 つまり青い瞳の象徴として多羅菩薩、その瞳を持つ阿難の智慧の象徴として文殊菩薩とするとつじつまが合います。

 まあ、ここは私の想像の域ですが、皆さんはどう思いますか?

参考:なぜか青蓮華を持つのが普賢菩薩という十六善神図(文殊と普賢の持物が逆転している……割とこうなっている図が多いと聞きます)

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ちなみにインド人に青い瞳を持つ方が多くいるのはご存知の通りです。

 

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