今回の記事は、ちょっと珍しい観音さまのお話です。
まずはその前に「珍しくない観音さま」つまり日本で信仰されていて皆が知っている観音さまの概要を確認してみます。※以下の図書を大幅に参考ました。
「観音菩薩~変幻自在な姿をとる救済者(佐久間瑠璃子著)」春秋社
日本で多く信仰されている観音さまは、人間と近しいお姿をした一面二臂の聖(正)観音さまが多いと思います。具体的には大乗仏教(例えば法華経の普門品(観音経)の信仰形態に元づくお姿ですね。
次によく見かけるのは六観音で見られるような変化観音。これらの変化観音は信仰形態的には密教的信仰に元づくお姿になります。
また、これ以外に「たまに見かける」というお姿に中国特有の信仰に由来する観音さまがいます。例えば「楊柳観音」「龍頭観音」「魚籃観音」など。これらの観音の多くは日本では比較的新しくまとめられた三十三観音のメンバーになっていますが、仏像としてはあまり見かけると事はなく、掛け軸の題材などに描かれることが多い印象です。。
さて、今日話題にするのは、上記のように日本でみることができる観音さまではない観音さまです。具体的には「後期変化観音」と呼ばれる観音さまです。
変化観音は密教的信仰に基づくと上記しましたが、日本へ伝わったのは「前期変化観音」と呼ばれ、それ以降に登場した「後期変化観音」というのは日本ではほぼ見られません(伝わっていない)。
具体的にどんなお名前の観音さまがいるか見てみます。
参考にするのは『サーダナ・マーラー』という密教修法と尊像の関係を記した文献です。
※サーダナマーラーリンク
①シャダクリシャリー観音→六字観音
②シンハナーダ観音→獅子吼観音
③ニーラカンタ観音→青頸(しょうきょう)観音
④ハーラーハラ観音
⑤パドマナルッテーシュバラ観音→蓮華舞観音
⑥ハリハリアリヴァーハナ観音→生起(しょうき)観音
⑦トライロークヤヴァシャンカラ観音→三界制御観音
⑧ラクタ観音→赤観音
⑨マーヤージャーラクラマ観音→幻化網次第観音
⑩スガティサンダルシャナ観音→善趣示顕観音
⑪プレータサンタルピタ観音
⑫スカーヴァティー観音→極楽観音
さあ、どうでしょう?聞いたことある観音さまはいましたか?私は辛うじて①六字観音と③青頸観音⑪プレータサンタルピタ観音は知っていましたが、他は全く知りませんでした。
これらの観音さまは日本に入ってきていないので、我々が信仰するのは難しいと思われます。そもそも名前すら知らないので「信仰したい」というところまですらたどり着けないですしね(笑)
ただ、今回敢えてこれらの観音さまを紹介したのは、このメンバーの中に私が気になる観音さまがいたので一応記事として残しておこうと思ったのです。
私が気になった観音さまは⑪プレータサンタルピタ観音です。
なぜこの観音さまのことが気になるかと言うと、凄く曖昧な話なんですが「たまたまた仏画を見かけて気になったから」という理由です。
その仏画は、『密教仏像事典 頼富本宏・下泉全暁著(人文書院)』で見かけた下記の絵です。
(引用:『密教仏像事典 頼富本宏・下泉全暁著(人文書院)』)
なんで気になったのか?それは両手で与願印をしている姿がなんとも異様に感じたからです。与願印といえば通常は施無畏印とセットで使われる印相なのにどうして諸手で「与願印」なんだ?ということが妙に引っかかりました。
そして私は『密教仏像事典 頼富本宏・下泉全暁著(人文書院)』に書かれていたこの観音さまの説明文、つまり「死霊(餓鬼)を救済する観音さま」という説明を見て、「ザワザワ」と心にさざ波が立ちました。
「え?「死霊」を救うために諸手で与願印なの?片手じゃ足りないってこと?」
そんな疑問が俄かに沸き起こり迂闊にも「ゾワゾワ」としてしまいました。
私は過去に冥府の王、焔摩天に強い信仰を感じるという話題を書きました。また死肉を食らう荼枳尼天を墓所で教化した摩訶伽羅天とも強いご縁があることを書きました。だから潜在的に「死」と結びついた尊格を意識しやすいのかもしれません。
しかし、偶然気になった観音がまさがまたもや「死」を連想する「死霊を救済する観音」だったとなると、さすがに「ザワザワ」します。
しかし、今のところだからと言ってこれ以上のこの観音さまを深堀するつもりはないのですが(ネットではほぼ情報は拾えないし)、それでもとても気になる思いが抜けないのが正直なところ……
また将来ご縁があるようならまたその時はブログで紹介してみます。
今日のところはここまで(^^)
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