昨日、私は日常の如く、堂内で荼枳尼天の供養法を勤めていた。荼枳尼天を拝みつつ、昨日はなぜか数ある仏尊の中から、「多羅菩薩」ばかりが目に入ってくる。「視線が吸い寄せられるような」また「向こうから見られている」「語りかけられている」とも思えるような。
こういった「あれ?」と感じたことは放置しない。これが私の流儀。
でも、いたずらに「マジカルな話」に結び付けたりもしない。様々な角度から中立的な解釈を加える。
まずはお堅く神経生理学的視点、つまり科学的視点にも立ってみる。
私たちの脳は、膨大な感覚情報の中から無意識的に「重要だと思われるもの」を選んで処理する機能を持っている。これが「選択的注意(Selective Attention)」と呼ばれる脳の機能だ。今回のように「視覚に関する情報」に関しては視覚野(後頭葉)と前頭前野との連携で制御されていると説明される。
つまり脳がこの時に「今の自分にとって意味あるもの」を、無意識下の感情・記憶・価値観などに基づいて自動的に選んでいる、という解釈だ。
供養の最中、私の視線が多羅菩薩へと引き寄せられたのは、もしかするとその瞬間、私の無意識が「慈悲」「救済」「迅速な加護」といった多羅菩薩の象徴性に強く反応していたからかもしれない、といった解釈を想像してみる。
ついでに、ここの読者ではおなじみの私の大好きな心理学者「アーノルド・ミンデル」の説でも当然解釈をする。私の場合はね。彼のユニークなところは夢と現実の境界を取っ払ったこと。ということは、現実世界そのものが夢と同じく“意味を含む象徴空間”であると説いた。フロイトやユングは「夢の分析」をしたが、ミンデルは現実世界の出来事も「夢と同等に扱う」というのが面白いのだ。
ミンデルの理論では、「目が合う」「視線が合う」「何かが気になって仕方がない」といった微細な現象を特に重視し、それらは“夢が現実に浸透してきているサイン”としていた。
だとすると、私が堂内で“なぜか”多羅菩薩に惹かれたのは、無意識の深層から送られてきた「今、この仏のメッセージに気づいてほしい」という夢の断片が、現実の視覚現象として顕現した可能性がある、と解釈される。これは、大げさに表現すれば(そしてミンデルやユングのような表現を使うなら)多羅菩薩的な魂が私との対話を望まれたのだ、という感じになる。
最後は、いよいよ密教的に解釈する。仏尊は“見られるもの”であると同時に“見ているもの”。入我我入。つまり密教においては言わずもがな、仏像とは単なる彫像ではない。仏尊はその瞬間、「現前する尊格」であり、供養や礼拝によってその力が“降りる”場となる。
多羅菩薩は、慈悲と迅速な救済を司る尊。特に女性的で母性的なエネルギーを持ち、恐れや不安に対して即座に応答する「菩薩」である。それは荼枳尼天と重なる要素も多い。彼女が“目に飛び込んできた”というのは、言い換えれば、こちらの魂が「今、自分に必要なのは荼枳尼天の中にある多羅菩薩的な慈悲なのだ」と訴えていたと思ってみる。
こういう時は、ポジティブに「菩薩が行者の心の動きに応答してくれた」と思い切って解釈しても、決して自我肥大だとは思わない。むしろ、当たり前のことと思うべきだと思ったりもする。
多羅菩薩に無意識のうちに目が行った体験。それは脳の注意メカニズムでも、深層の無意識の反応でも説明できる。だが、行者である私はこう説明したい。
仏は、我々が「見たい」と思うときではなく、「見るべき」ときにその姿を示してくれるのだ。
それは神秘ではなく、実に自然な、魂の呼応としての出来事である。これからも私は、壇上に座しつつ、ただ仏を見るのではなく、「仏に見られている私自身の内なる声」に耳を澄ませていきたい。
祈願のお申込みについて
本院で承っている祈願につきまして、以下解説ページから。
当院のご本尊である准胝仏母さまの祈願です。滅罪、延命、求子に強いご尊格です。
荼枳尼天とはお稲荷さまの仏教でも呼び名です。
商売繁盛、学業増進、立身出世など増益につよいご神さまです
病気平癒、健康維持にとてもよく効く祈祷で、お加持をした「お札」を毎日枕の下に入れてその札に「悪いもの」を吸い取ってもらうように機能させます。人によっては患部に当てるよう袋を作ってお守りのようにしている方もいます。不動明王による祈祷を行いますが、当院では延命に強い准胝仏母の力もお借りして祈祷致します。
文殊菩薩祈願
「三人寄らば文殊の知恵」というように智慧を象徴する尊格です。学業増進祈祷、無明を断ち切る祈祷などでお力をいただけます。受験用のお守りもお出ししています。
光明真言にによる供養(光明供)にて、ご先祖供養を致します。光明真言には強い滅罪の功徳がございます。祈願を叶えるには先祖供養がしっかりできているのが大前提です。
(「どんな衆生でも救う」という使命を持って誕生した慈悲深い菩薩さまです。皆様の願いを菩薩さまにお伝えするお手伝いをします)
年始(旧正月)に「星祭」を行い、祈祷札をお出ししておりますが、随時「星祈祷」をお受けしています。
※不動尊華水供を修法致します。
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